博士論文の提出時には剽窃チェックが必須
2014年に理化学研究所において万能細胞に関する論文をNature発表し一躍有名となった元研究者の方の研究や博士論文に記載している内容にまで不正が認められ、最終的に学位が取り消されたのは有名な話です。
その方の博士論文には米国立衛生研究所のwebサイトに掲載されている文章や画像をそのまま引用したりと、計26か所の問題点が認められたとあります。
近年のこのような研究の不正行為に対して、研究論文の不正が無いよう剽窃(ひょうせつ:他人の文章をコピーし、自分のものとすること)チェックツールによる事前の不正行為が行われなかったことの確認が行われています。
iThenticateとは
概要
iThenticate(アイセンティケイト)は論文等の不正の有無を確認するため、アメリカのiParadigum,LLCが提供する剽窃チェックツールです。
冒頭のエピソードのような不正行為があってからか、国内の大学では剽窃チェックツールであるiThenticateの導入が進み、数年前に管理人が勤務する会社でもiThenticateの導入が行われました。
管理人が社会人学生として学ばせてもらった筑波大学大学院では、指導教官は博士論文の審査を実施する前に剽窃チェックツールであるiThenticateで必ず確認し、そのうえで、学生が作成した”論文公正に関する確認書”にサインをする必要があります。
iThenticateでログインして、ファイル(Word,PDFなど)をアップロードすると、数十秒から数分後に以下のような画面が現れます。左側にアップした文章が表示され、既に出回っている論文等のデータベースを基に剽窃が疑われる個所がマーカーで色付けされたように表示され、右側にその基となる論文等の情報が表示されます。
そして、一番気にされるのが右上のパーセンテージで、管理人の指導教官はこのシミラリティ(類似度)を20%以下にするようにとよく管理人に言ってきました。管理人は最終的に14%に数値を抑え、無事博士論文の最終版を審議会に提出することができました。
シミラリティの数値を抑えるには
仮にこのシミラリティの数値が20%を超える場合には、文章表現の変更が必要になります。上記の色付けされた部分の表現に関して修正や加筆、削除などすることで数値が減っていくことから、地道にこれらの作業を行う必要があります。
iThenticateの代わりとなるツールは
iThenticateは基本的に法人契約です。ですので、研究室もしくは、会社の担当者にお願いして剽窃チェックを実施してもらうことになるかと思います。
web上の無料剽窃ツール
こちらは”剽窃チェック 無料”などと検索していただくとたくさん出てきます。色々調べてみると無料でチェックできるのはせいぜい数千文字であり、1万文字を軽く超えるであろう博士論文全体のシミラリティを確認するには無理があります。また、公開していない論文を無料のツールでファイルごとアップするのは個人的には抵抗があります。
Grammalyのプレミアムサービス
こちらは以前の記事で紹介しましたが、有料のプレミアムサービスに入ることで剽窃チェック機能も使用できるようになります。wordのGrammalyプラグインを使用すると、ファイル全体の剽窃チェックを行ってくれ、かつ全体のシミラリティの程度も示してくれます。iThenticateとどの程度の違いがあるかは検証しきれていませんが、参考にはなるかと思います。
英文校正サービスのオプションを使用する
英文校正サービスのオプションとしてiThenticateの剽窃チェックを受けることができます。例えばこちらも以前の記事で紹介したeditageではオプションでiThenticateを用いた剽窃チェックを英文校正後に行ってくれるサービスがあります。有料オプションの場合は1万円プラスで、2,3日の営業日分の時間がかかるとのことでした。
剽窃をしないよう研究者倫理を忘れないよう心掛けましょう
意図的であろうと、無意識であろうと、剽窃を行ってしまうと結果として研究者としての信頼を落とすことにつながってしまいます。博士論文を書く時だけではなく、その後の研究者人生のためにも、普段から研究者としての倫理感を忘れないようにしたいと管理人も感じています。
最後に以前講習で研究者倫理について学んだ際に勧められた本を紹介して終わりにしたいと思います。ページ数も60ページ程度で大学生の生徒を対象に書かれているため、非常に読みやすくお勧めです。
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