筑波大学 社会人のための博士後期課程「早期修了プログラム」について

2020/08/03

社会人博士 早期修了プログラム 筑波大学大学院

t f B! P L

はじめに

先日投稿しました記事”社会人博士になるにあたって”でも少しお話ししましたが、今回管理人が履修しました筑波大学大学院の社会人のための博士後期課程「早期修了プログラム」について説明したいと思います。


これまでの既存の履修方法(課程博士、論文博士)でのデメリット

前述の通り、課程博士は大学院に入学し、通常は3年もしくは場合によってはそれ以上の期間を指導教員の元で研究実績を重ね論文を執筆する必要があり、その期間中社会人としては通常業務に集中できないのは影響が大きいかと思います。

一方論文博士は社会人としての実績を基に大学院に入学せず、論文のみを大学に提出します。論文博士は日本特有の制度であることから、特に海外から学位をとった対象者の質の保証が得られにくく、国としても将来的になくしていく方向で検討しているようです。

早期修了プログラムとは?

上記の既存の履修方法でのデメリットを考慮し、筑波大学では”頑張る社会人を応援”するという考えで”筑波大学社会人のための博士後期課程早期修了プログラム”を2007年より立ち上げました。当該プログラムは課程博士と同様に大学院に入学し、必要単位を取得しながら、指導教員の指導の基、早期修了プログラムが設けている履修者を対象とした達成度評価を満たしていることと、社会人としての研究実績を基に博士論文を書き上げることで”最短で1年”で博士号を取得することのできるプログラムになります。

早期修了制度として課程博士として入学してから素晴らしい業績を挙げた者を通常より早く修了させるという制度は国内の大学院でも見受けられます。しかし、前述のように既に入学前に有している研究実績のみで修了できるというところが特徴です。もちろん入学後に新たにデータを取り、博士論文に反映させることもできます。

現在では筑波大学だけでなく、名古屋市立大学大学院経済学研究科芝浦工業大学大学院理工学研究科などで同様の早期修了プログラムを採用し始めているようです。

当該プログラムの履修により在学期間の短縮化による経済的な負担が軽減されます。また、大学院に入学して指導教官の研究室に所属することで指導も受けることができますし、人脈の形成も可能になります。

早期修了プログラムを実施している実施研究群・学位プログラム

早期修了プログラムを実施している研究群・学位プログラム(旧研究科・専攻)は2020年7月現在は以下の通りになります。

 1. ビジネス科学研究群
 (1)法学学位プログラム
 (2)経営学学位プログラム

   2. 数理物質科学研究群
   (1)数学学位プログラム
 (2)物理学学位プログラム
 (3)化学学位プログラム
 (4)応用理工学学位プログラム
   ① 電子・物理工学サブプログラム
   ② 物性・分子工学サブプログラム
   ③ MINS連携物質・材料郊外うサブプログラム
  
 3. システム情報工学研究群
 (1)社会工学学位プログラム
 (2)リスク・レジリエンス工学学位プログラム
   (3)情報理工学学位プログラム
   (4)知能機能システム学位プログラム
 (5)構造エネルギー工学学位プログラム
   (6)ライフイノベーション(生物情報学)学位プログラム

 4. 生命地球科学研究群
   (1)生物学学位プログラム
 (2)農学学位プログラム
 (3)生命農学学位プログラム
   (4) 生命産業科学学位プログラム
     (5) 地球科学学位プログラム
 (6)環境学学位プログラム
     (7) ライフイノベーション(食料革新学)学位プログラム
     (8) ライフイノベーション(環境制御学)学位プログラム
     (9) ライフイノベーション(生体分子材料学)学位プログラム

このように非常に幅広い学問領域で早期修了プログラムを実施していることがわかるかと思います。

早期修了プログラム履修に必要な条件

当該プログラムを履修し最短1年で学位を取得するにはまず 1. 指導教官になってくれる先生との事前アポイント、2.  指導教官が学生として受け入れることのできる研究群・学位プログラムを選択し、大学院入試を受ける、3. 大学院入試合格後、早期プログラム履修審査を受けるの3つのステップを踏む必要があります。順番に説明したいと思います。

1. 指導教官になってくれる先生との事前アポイント
これは募集要項にも記載されていますが、指導教官になってくださる先生をはっきりさせておかなければ何も始まりません。筑波大学でつながりのある先生がいるのであれば直接相談するのが一番いいと思いますが、自分の研究しているジャンルに近い研究群もしくは学位プログラムの事務局に連絡し、相談することで紹介してもらえるとのことです。

2. 大学院入試を受験する
社会人の場合は社会人特別選抜方式を選択できます。これにより一部の学位プログラムであれば本来であれば必要な学科試験が免除されます。例えば生物学学位プログラムでは英語の試験としてTOEICもしくはTOEFLのスコアが求められますが、こちらが免除となります。

ちなみに社会人特別選抜方式の受験資格は共通して以下の通りとなります。
(1)入学前年度の段階で常勤、非常勤を問わず
      一定期間の社会的経験を有する者(見込み含む)
  (2) 修士の学位を有する者
  (3) 個別審査により、本学大学院において修士の学位と同等以上の
    学力があると認められた者

(3)に関しましては大学院入試より前の段階で個別審査に合格すれば、修士号を取得していなくても博士後期課程に入学することができるということです。

加えて、一定の研究実績が必要となります。各プログラムによって必要となる論文数や学会発表数は異なりますが、基本的には国際学術誌に1~3報以上、一部学位プログラムでは口頭発表も必要となるようです。詳しくは早期修了プロジェクトホームページのプログラム審査要件を確認ください。

なお、2020年度に受験される場合は新型コロナウィルスによる影響により通常現地での実施がオンライン入試に変更になる可能性があります。そのため、オンライン試験ができる環境を整えておく必要があるかもしれません。今年度中に受験を検討される方は、ホームページをよく確認しておくことをお勧めいたします。なお、事前に大学より以下の条件を整えておくよう大学院募集要項のホームページに記載がありましたので併せて転記します。

 (1) 明るく静寂な個室環境
 (2) 動画を送受信できるネットワーク環境
   (3) カメラ・マイク付きパソコン
 (4) スマートフォン(カメラ付き)※
     ※ネットワークトラブルが発生した時用の応急対応用

3. 早期修了プログラム履修審査を受験する
大学院入試に合格後事務局より履修審査に必要な書類の提出が求められます。私が審査を受けたときに求められた書類は以下の通りです。

 (1) 履修希望者の履歴、専門分野などの概要
 (2) 業績リスト(既に発表している査読付き学術論文など)
 (3) 達成度評価システムに基づく自己能力評価
   (4) 博士論文の構想

おわりに

社会人にとって博士号を取得するにあたって既存の課程博士、論文博士でのデメリットをなくし、履修しやすいように考えられた短期集中型のプログラムになっています。自分自身の都合に合わせて履修を検討してみてはいかがでしょうか。今後管理人が実際に当該プログラムを履修した際の体験談を載せる予定ですので参考にしてみてください。

リカリポについて

自分の写真
現在某メーカーに勤務する技術系サラリーマンで、現在妻と年長の息子の三人暮らしです。 皆さんに少しでも有益な情報を共有化できるよう努力しますのでよろしくお願いします。

このブログを検索

にほんブログ村

関連するブログへのリンクです
にほんブログ村 大学生日記ブログ 博士課程大学院生へ

QooQ